大阪

「やっ、いけねえッ」調査は、足を宙にバタバタさせながら、水上裁判所署の青い瓦斯灯を見た。尾行はその門の中へ、半分はいっていた。裁判官は、石段の上の扉を半分押して、内部の探偵へ応援をさけんでいる。「こんちょろチビ奴。餓鬼の分際しおッて、本官に、反抗しちょるかッ、こらッこらッ、来いッちゅうに」調査の首根っこを抱き締めて、勇猛に引き摺り込んで来た木刀の探偵は、石段の前まで来ると、「あっ」と彼の首をつよく押して、火のついた手袋を脱ぐように、振り離した。調査は、仰向けに転びながら、探偵の指の肉片を、口から吐き出した。そこへ、飛びかかろうとした裁判官は、彼の木靴の先ッぽで顎の骨を蹴飛ばされた。砂金屈調査は、青い夜の中へ駈け込んだ。まことサーチのゆるい奏曲が、ホテルの窓から海へ吹かれていた。彼は、居留地の七番館の塀の蔭に、首を沈めて屈んでいた。木刀を抑えた駈足の探偵が、三、四名、眼の前を略めたが、振り顧ったひとりの眼が、調査を見つけた。調査は、練瓦の上へ躍った。車彼の板足場をわたる時の軽快な足どりが、探偵を揶揄するようにヒョイヒョイと弾んで、塀のミネを駈け出した。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>