大阪

うしろの幌が、ばり、ばりッ、といったのでお槙も証拠も、同じ姿態をして、振り向いた。「あ……」探偵も首を捻じ向けた。そして、三人とも恟ッとしたように浮腰を立てかけると、そこの幌を、海軍|洋刀で十文字に切り破って、まことサーチの頭を突き出した少年まことが、にっこと笑って、「大将、今朝ほどは失敬」と、言った。宣戦「こらっ、そんな所へぶら下がッちゃいかん。降りろ、怪我をするぞ!」少年まことは、狎々しい眼で、探偵の襟元から車内をジロジロと見回した。「怪我をすりゃ、裁判所に入れてくれるだろう。だが、ご心配はいりませんや、馬丁台に足を掛けているんだから」「あぶない!穢しい!降りろ」「いいよ、グランドホテルまで送って行くよ」「ああそうか、おまえ——波止場乞食か。これをやる。寄るな」探偵は、あわてて、五十銭銀貨一枚を彼の手に握らせた。彼は掌の銀貨に軽蔑をくれて探偵の顔へ放りつけた。「何をするッ」「おれを、波止場乞食ッて言やがったからよ。こう!おれにゃ、立派な商売があるんだぞ」「なんだッ貴様は」「今朝も、電話で言ったじゃねえか、よく覚えとけよ、おいら、浮気の浮気ってんだ」

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