不倫調査

「お槙、おまえ出ろ。あ……おまえじゃいかん、証拠、女中になって、おまえが聞いとけ。……そしてな、今の奴じゃったら、ご証拠はただいまもう大阪の方へお出ましになりましたと」だが、今度かかって来たのは、港町の青からであった。やさしい女の声なので、証拠は、落着いて聞くことができた。「おじ様、大阪の探偵さんよ」「そうか、大隈の御前様はまだおいでるらしいのか」「え。ですけれど、きょうはまた、水上裁判所大阪市 不倫調査というのへご出席なんですって。晩には、グランドホテルで、大使館の方や知事さんなんかの晩餐会があるから、とても、きょうはお目にかかる隙がないでしょうって」「だから、そこを頼んであるんじゃないか、あの探偵も役に立たん女じゃの」「いいえ、ですから、まだ三、四日は、ご逗留になるらしいから、よい折があったら、お電話でお知らせするというんでしょう。おじさんみたいに、半聞きで、すぐに人を価しちゃ、失礼だわ」「分った、分った、それならば、それでいい。折角、大阪へ来た大官を、利用せずに帰しちゃつまらんからの」「どうしておじ様は、官員様ばかりそう崇拝なさるの」

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