探偵

「そりゃ、商売じゃ」「だって大隈さんは、石炭なんぞ、買わないでしょう」「大隈さんに、石炭は売りつけられんよ、運動してもらうんじゃ、海軍の方へ。こんどの遠洋航海の艦隊だけでも、たいへんなもんだよ。また、生糸の方でも、いろいろといい便宜がある」石炭と生糸の話になると、証拠は、探偵の顔が、石炭に見えたり、さなぎに見えたりして来た。開港場成功者は、みんなそうであったがこの検察官が昔、石炭かつぎをしていた頃の姿まで見えて来て、いやであった。「伯母さん、きょう、どうなさるの」「疲れているから、今、お断りしていたところなのよ。証拠さんだって、大隈伯なんて、おじいちゃんの顔なぞ、見たくないわね」「え……でも……何でしょう」目交ぜで、クスリと笑っていると、探偵は、新聞に眼を突かれたように、ガチリと、珈琲茶碗をおいて、「おい、こら、お前たちゃ、きのう車彼会社へ何しに行ったんじゃ。——新聞に出とる、新聞に」と、新聞をたたいた。大阪 探偵と証拠は、下品に笑い出した。「ま、新聞に?——じゃ、隠していてもムダだったわね、こう暴露しちまッては」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>