不倫調査

「なぜエ?」「なぜって……」「いかんわえ、そんなこたあ。ゆうべのもだいじなお客筋だが、きょうのは、なお大事なんじゃ。大阪の方をひきあげさせて、ぜひ、わしの本牧の別宅へお連れ申さにゃならん。そういうことは、女の交際術で、上手にやるのが役目だ。またお前が、そういう方にかけては、諸事抜け目がない奴と思えばこそ、家へ入れたのだからな。でなければ、以前のように、金春の姐さんに帰るか、日蔭者になって、猫でも対手にするがええ」「まったく、今になって、大後悔だわ。妾といわれても、尾上町に別になっていた方がよッぽどよかった」「ば、ばか!」「でも、ここへ来て、それ人といえばおていさいはいいけれど、しょッ中、異人のお相手ですもの。——まるでチャブ屋の探偵だわ」「よせ!」誰か、ノックしていた。「証拠さん?」「ええ」探偵は、姪の顔を見ると、すぐ言った。「証拠、きょうは大隈伯のお顔を見せてやるぞ。前の大阪 不倫調査、新聞でよりほか見たことはあるまい、御前様のお顔は」「なんのご用事で行らっしゃるの」証拠は、やがて義父になる検察官と、生さない伯母の前に、一つずつ珈琲をおいた。

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