探偵

「こっちで用があるんだ」彼は、中へとびこんだ。先刻の夫人と令嬢がびっくりして、卓から立った。オペラバッグが、彼女と刑事の間にあった。刑事は、彼女たちを、眼でかばいながら、「なんだおまえは」「浮気の浮気」「何しにはいって来た!」「おれの連れだよ、その人は。一緒に帰るんだ」「これは泥棒だ」「冗談じゃない……」「——奥様」刑事は、体を横に反らした。「ご紛失の腕輪は、これでしょうな」白金台の金剛石の環が、探偵 大阪と、卓の上におかれた。「え、これですの!……まあ、よかったわねえ、証拠さん」「ほんとにネ」「ほかに、まだ何か、あったように伺いましたが」「え、書類と、粒の宝石が、……でも、ようございますわ、これさえ戻れば」「宝石じゃ、ちょっと出ませんな。指輪ぐらいなものは、食ってしまいますからな、こういう動物は」と、不倫の頭へ、手をのせた。「動物だ?」不倫は、刑事の手をふり落しながら、わなわなふるえる声で、「動物たあ何ですか。その品が、我輩のポケットから出たから、我輩が泥棒だというように言うが、全然、知らんこッてす。まったく、誰かそばにいた奴が」「いかんよ、後で聞こう」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>